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Q&A

ジョイントコートとは何ですか?

日本水道鋼管協会規格のWSP 012-2006 「水道用塗覆装鋼管ジョイントコート」では、ジョイントコートとは, 水道用塗覆装鋼管の現場溶接部外面に施す被覆材料のことで、適用する防食材が熱収縮チューブ及び熱収縮シートのプラスチック系、ならびに防食材が防食ゴムシートのゴム系の、防食材料の総称と定義されています。

ジョイントコートには、水道用塗覆装鋼管の外面被覆材と同等の防食性能をもつ材料が使用されています。現在、材料としてプラスチック系(熱収縮シート, 熱収縮チューブ)とゴム系(ゴム系シート)の 2 種類があり, 性能については衝撃強さによりタイプⅠとタイプⅡに分別されます。それらの特徴は以下のとおりです。

1. プラスチック系(熱収縮系)ジョイントコート
熱収縮シートは, ポリエチレンを主成分とした熱収縮系基材に合成ゴムを主成分とした粘着材を均一に塗布したものです。このシートを主体に付属品のシーリング材と接合用シートで構成されています。

2. ゴム系ジョイントコート
ゴム系ジョイントコートは, EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・メチレンリンケージ)およびブチルゴムを主成分とし, 軟化剤, 充填剤等からなる加硫ゴムシートと, 合成ゴムを主成分とした粘着材を裏面に付着させたものです。保護シートの材質は, 一般に合成ゴム系のものが使用されています。

ゴム系ジョイントコートはプラスチック系ジョイントコートと同様に,埋設鋼管の現場溶接継手の外面防食材料で,管内に充水されている状態の管外面の防食,外面塗覆装の補修および共同溝内の配管作業等火気が使用できない環境の箇所において適用できます。

3. ジョイントコートの種類と構成

表-1 ジョイントコートの種類と構成
種   類 タイプ 構   成
防食材 保護シート 耐衝撃シート
プラスチック系
ジョイントコート
(熱収縮チューブ)
熱収縮チューブ ―― ――
熱収縮チューブ ―― ポリエチレンシートP
プラスチック系
ジョイントコート
(熱収縮シート)
熱収縮シート ―― ――
熱収縮シート ―― ポリエチレンシートP
ゴム系
ジョイントコート
防食ゴムシート 保護ゴムシート ――
防食ゴムシート 保護ゴムシート ポリエチレンシートR

4. ジョイントコートの性能
  ジョイントコートの性能を表-2にまとめます。

表-2 ジョイントコートの性能概要
性 能 項 目 性 能
衝撃強さ タイプⅠ 10 J 以上
タイプⅡ 20 J 以上
ピール強度 N/10mm 10  以上

5. ジョイントコートの施工方法
ジョイントコートの施工は, 熱収縮シートを例にとると継手の溶接終了後, 一般的に次のような手順となります。

(1) 下地処理
溶接によって生じたスラグ, スパッターなどをディスクグラインダー等によって除去し, ほこり, 水分, 油分を布等で拭き取り清浄にします。

(2) 管体予熱
専用バーナーを用いて溶接部中央から左右に炎をあて, 管体を60 ℃程度に予熱します。

(3) 熱収縮シートの巻き付け
シートの貼始めの位置は, 1.5時(管天から45°)とし, 貼始め部端部にシーリング材を圧着し, シワが生じないように熱収縮シートを軽く引張り, 貼始め部にラップして貼り付けます。

(4) 熱収縮シートの加熱収縮
専用バーナーを用いて, 炎を直角に当てゆっくり移動しながら下方から上方,中央部から側端部へ空気を追い出す要領で加熱収縮を行います。

(5) 検査
外観検査やホリデーディテクターを用いたピンホール検査を行います。

写真-1 現地溶接部の防食(ジョイントコート)
写真-1 現地溶接部の防食(ジョイントコート)

6. ジョイントコート施工後の構造
 ジョイントコートの構造を表-3に示します。

表-3 ジョイントコート施工後の構造
種類 タイプ
プラスチック系
ジョイントコート
(熱収縮チューブ)
イメージ1 イメージ2
プラスチック系
ジョイントコート
(熱収縮シート)
イメージ3 イメージ4
ゴム系
ジョイントコート
イメージ5 イメージ6

7. ジョイントコートの寸法
 ジョイントコートの寸法を表-4に示します。

表-4 ジョイントコートの寸法
種  類 厚   さ
呼び径(A) 厚さ(mm) 呼び径(A) 幅(mm)
熱収縮系 熱収縮チューブ 80~1000 基 材   1.5以上
粘着材   1.0以上
ポリエチレンシートP 1.0以上
450以下 450以上
500~900 500以上
1000 550以上
熱収縮シート 80~3,000 基 材   1.5以上
粘着材   1.0以上
ポリエチレンシートP 1.0以上
450以下 450以上
500~900 500以上
1,000~1,500 550以上
1,600~3,000 600以上
ゴム系 ゴム系シート 80~1,500
1,600~3,000
基 材   1.5以上
粘着材   1.0以上
ポリエチレンシートR 1.0以上
80~1,500 450以上
1,600~3,000 550以上
保護ゴムシート 80~3,000 2.0以上 1,500以下 450以上
1,600~3,000 550以上

8. ジョイントコートの物理的特性
 ジョイントコートの特性を表-5に示します。

表-5 ジョイントコートの物理的特性
項目 熱収縮系防食シート ゴム系防食シート
加熱収縮前 加熱収縮後
基材 密度(g/cm3) 0.92~0.96 1.2~1.4
引張強さ  (MPa) 19.6以上 14.7以上 3.92以上
伸 び   (%) 300以上 300以上 300以上
硬 さ   (HDD) 45以上 45以上 45以上(HDA)
収縮率(%) 管周方向 20以上*
管軸方向 8以下
吸水率   (%) 0.03以下 0.1以下
体積抵抗率 (MΩcm) 1×108以上 1×108以上
粘着材 密  度  (g/cm3) 1.0以上 1.2~1.5
ちょう度  (-) 80以下 100以下
軟化点℃  (℃) 60以上 100以上**

*チューブの収縮率は40%以上とする。 **針入度(25℃)

9. プラスチック系(熱収縮系)ジョイントコートの内面塗膜に及ぼす影響

プラスチック系ジョイントコートは, 管体を予熱し, 熱収縮チューブ(シート)を取り付け, その表面を加熱し完全収縮させ密着させる構造であるため, 入熱による内面塗膜への悪影響が懸念されます。

これについては, 日本水道協会JWWA K 153「水道用ジョイントコート」に実験値を示した記述があります。

プラスチック系ジョイントコートの施工時における管体予熱と, その後の熱収縮チューブ加熱作業による管内面側の温度変化の実験値における測定例を図-1に示します。図より, 管内面における最高温度は70℃ を示していることが明らかです。

このプラスチック系ジョイントコートの施工時における管内面最高温度は, 短時間かつ一過性のものです。したがって, 現場溶接部が加熱されても内面塗装(エポキシ樹脂)の耐熱温度温度(約140℃)以下となるため, 内面塗膜には何ら影響はありません。

図-1 プラスチック系ジョイントコート施工時の管内面側温度の測定例(JWWA K 153より)
図-1 プラスチック系ジョイントコート施工時の管内面側温度の測定例(JWWA K 153より)

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