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Q&A

WSP 073ステンレス鋼製角形配水池設計指針のポイントを教えてください

ステンレス銅製角形跡池の現状

近年,メンテナンスの容易牲の観点から,従来の炭素鋼に代わりステンレス鋼の採用が増えつつあり,さらに敷地の制約条件から,角形の配水池が数多く採用されるようになってきました。しかし配水池には内水圧が作用するため,角形配水池は円筒形に比較して構造的には不利であり,内部補剛材の設置が必要であるほか,有効水深の制約を受ける等,設計的には複雑となります。また,その構造形式は様々に異なり,設計手法についても統一的に整理されたものがありませんでした。

角形配水池に関するWSPの対応

上記課題に対応するため,当協会では,これまで実施した水管橋や円筒形配水池等のステンレス銅製構造物に関する設計指針制定の知見を活かし,ステンレス鋼製角形配水池の設計手法の確立に取り組んで参りました。このたびWSP073-2010 「ステンレス鋼製角形 配水池の設計指針」の制定に至りましたので,その主なポイントについてご紹介いたします。

WSP 073の適用範囲

本指針は,上水道で使用するステンレス鋼製の角形配水池を対象としたものですが,以下の要件を満たすものに限定しております。

-主要部材は全てステンレス鋼 (液相部: SUS304又はSUS316,気相部:SUS329J4L) とし,接合は突合せ溶接または両面すみ肉溶接を原則とします。

特に,次に挙げる応力を伝達すべき溶接継手においては,部分溶け込み溶接を使用してはなりません。

  1. 溶接線と直角方向に引張力が作用する場合
  2. 溶接線を軸とする曲げが作用する場合
  3. 繰り返し荷重を受ける場合

-構造は,底板・アニュラプレート側板・仕切板・中間補強帯・屋根板・支柱・ブレ}スを主要構造部材としています。

-形状は,転倒・滑動に対して安定した形状(全高10m以下, HL/L2が0.75以下,アンカーボルト等の固定無しで転倒しない)を対象とします(図-1参照)。


図-1 適用形状

WSP073の耐震設計の考え方

水道施設耐震工法指針・解説(2009) では,配水池を重要な施設と位置づけており, WSP 073では重要度をランクA1として位置づけています。従って,耐震性能は, レベル1地震動では耐震性能1, レベル2地震動では耐震性能2を満足することとなります。WSP 073においては,設計の簡便牲を考慮して地震時保有水平耐力法を採用することとし,レベル2地震動で保持すべき耐震性能2に対しては,塑性域におけるエネルギー吸収性能を構造物特性係数で評価しています。したがって,耐震安全性は,耐力を上限とした許容応力度で照査することとしました。また,レベル1地震動で保持すべき耐震性能1に対しては,構造物特性係数を考慮せず,常時許容応力度に1.5倍の割増を考慮した許容応力度で照査することとしました。

以上, WSP073 -2010「ステンレス鋼製角形配水池設計指針」のポイントについて概要を紹介しました。本書が活用されて,配水池のライブサイクルコストの縮減ならびに来るべき地震の備えの一助となれば幸いです。

なお,ステンレス鋼による既設配水池の改良については,日本水道協会水道技術総合研究所と共同研究を行った「水道施設池状構造物の鋼による改良マニュアル」に詳述されていますのでご参照ください。

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